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Channel: Life in America ~JAPAN編
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シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)とサザン・オールスターズ。

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1月7日。フランスの週刊新聞「シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)」の事務所が襲撃され、同紙編集長と編集関係者や風刺画家、警官2日の計12人が死亡した事件が全世界に大きなショックを与えている。
「表現の自由」こそがフランスの文化であり財産であると自負してきたフランス人にとって、この事件はまさに「フランスの9.11」ともいわれるほどの衝撃的なテロ事件と受け止められている。
フランスはもとより全米でもこのテロ行為に対する大がかりなデモが行われ、「私はチャーリー!(Je suis CHARLIE !)」と書かれたカードを手に集まった群衆は百万人以上にものぼった。

「シャルリー・エブド」はこれまでにもイスラム教の預言者、ムハンマドを風刺した風刺画をたびたび掲載し、事務所を丸焼けにされるなどテロの標的になってきたにもかかわらず、一切ひるむことなく、いやむしろやられればやられるほど以前にも増して挑発的に掲載をつづけてきたという歴史がある。

この一連のニュースを読みながら、「保守的日本人の私」と「リベラルな私」が同居しているのを強く感じ、驚いた。
そういえば、数年前にもデンマークの風刺新聞がイスラム教を揶揄してアラブ諸国で暴動が起こったことがあるな、と以前の日記を紐解いてみたら・・・・なんと私は「保守的な日本人」として一方的に怒っていた。

“解り合うこと。”(2006年2月11日)

「いかなる理由があっても暴力的な手段による報復は許しがたいが、だからといって知識人ぶった顔で「言論の自由でしょ」という編集者の態度も、それ以上に許しがたいものがある。」
と。
2006年2月。約9年前の私だ。

今の私は、「風刺はカルチャー。その表現の自由はいかなる圧力にも負けてはならない」だ。
宗教を持たない私にとって「ジーザス」も「ムハンマド」もどうでもいいっちゃいいのだが、しかし当人(信じる人たち)からすれば「神」を辱められる行為は屈辱的で許しがたいものだろう。それは理解して余りある。
しかし、「シャルリー・エブド」はイスラムだけを風刺してきたわけではない。
キリストも、法王も、全て風刺の対象になってきた。もちろんそのたびに“配下の人たち”からは厳しい批判を受けてきたわけだが、その編集方針は創刊当時から一貫して"all components of left wing pluralism, and even abstainers"(様々な左派の見解、さらには政治的無関心な人の見解を反映すること)であり、ぶれは一切なかった。
だから、「謝ってその場を逃れる」という卑怯な行動も決してしなかった。
どんな批判にさらされようと、どんな脅迫に合おうと、自分たちの編集方針をみじんもかえることはなかった。

話はそれるが、この事件に関連してフランス在住のジャーナリストが書いた興味深いブログを読んだ。
この事件をただの「風刺画でイスラム教を馬鹿にした出版社がその報復に合った事件」と受け止めてはいけない、その背景にあるフランスという国、国民の“生命線”を正しく知る必要がある、という内容だった。
その国に住まなければ見えてこない本当の「裏の裏のカルチャー」は必ず存在する。今回の場合、フランスが移民に対して行ってきた政策などにも深く入り込んで考えなければ一概にこの事件(違う宗教や文化を信仰し続ける移民との不和・衝突)は語れないという意見に激しく同意した。
私自身、他国生活が長くなったことも大いに影響している。


そんなフランス国家の、国民の「戦う姿勢」を目の当たりにしている同じときに、日本からはまったく逆のニュースが流れてきた。
サザン・オールスターズの年越しライブでいろいろな「不遜な」行為があった事に対し抗議運動が起こり、最後にはサザンの事務所および桑田氏が謝罪コメントを寄せるという結末になったという。(1月15日)

日本ではシャルリー襲撃事件にからんだ“表現の自由”の抗議デモは起こっていたのだろうか?と想いを馳せている、まさに時を同じくしてのこのニュース。
正直もう、ガックリきてしまった。
日本もここまで堕ちたのか。

桑田圭祐という人、人となりを、日本国民は長い間見てきて知っているはずである。
社会風刺やときにはシャープなユーモアを織り交ぜたパフォーマンスをする人であることも。
それを、その“芸風”が批判の対象になるとは。事務所前で抗議運動?誰に謝れというのか?
初めから謝るようなことならしなければいい、そんなことをするような人ではない。なのに、ことを丸く収めるために事務所はさっさと謝ってしまった。

いったいなんなのさ?こっちのほうが国民をばかにしてやしないか?

結びの一文。

「すべてのお客様にご満足いただき、楽しんでいただけるエンタテインメントを目指して、今後もメンバー、スタッフ一同、たゆまぬ努力をして参る所存です。」

なんだ?この屁のような文句は?恥を知れ!


全国民をしてどんな圧力にも立ち上がる強さを見せつけたフランスと、ステージパフォーマンスにまでつまらないケチをつけて抗議行動にパワーを浪費している日本人の差を、まざまざと見せつけられた気がする。

私は口惜しい。情けない。
日本よ、どこへ行くのだ?





●以下、お詫びの全文

サザンオールスターズ年越ライブ2014に関するお詫び


いつもサザンオールスターズを応援いただき、誠にありがとうございます。

この度、2014年12月に横浜アリーナにて行われた、サザンオールスターズ年越ライブ2014「ひつじだよ!全員集合!」の一部内容について、お詫びとご説明を申し上げます。

このライブに関しましては、メンバー、スタッフ一同一丸となって、お客様に満足していただける最高のエンタテインメントを作り上げるべく、全力を尽くしてまいりました。そして、その中に、世の中に起きている様々な問題を憂慮し、平和を願う純粋な気持ちを込めました。また昨年秋、桑田佳祐が、紫綬褒章を賜るという栄誉に浴することができましたことから、ファンの方々に多数お集まりいただけるライブの場をお借りして、紫綬褒章をお披露目させていただき、いつも応援して下さっている皆様への感謝の気持ちをお伝えする場面も作らせていただきました。その際、感謝の表現方法に充分な配慮が足りず、ジョークを織り込み、紫綬褒章の取り扱いにも不備があった為、不快な思いをされた方もいらっしゃいました。深く反省すると共に、ここに謹んでお詫び申し上げます。

また、紅白歌合戦に出演させて頂いた折のつけ髭は、お客様に楽しんで頂ければという意図であり、他意は全くございません。

また、一昨年のライブで演出の為に使用されたデモなどのニュース映像の内容は、緊張が高まる世界の現状を憂い、平和を希望する意図で使用したものです。

以上、ライブの内容に関しまして、特定の団体や思想等に賛同、反対、あるいは貶めるなどといった意図は全くございません。

毎回、最高のライブを作るよう全力を尽くしておりますが、時として内容や運営に不備もあるかと思います。すべてのお客様にご満足いただき、楽しんでいただけるエンタテインメントを目指して、今後もメンバー、スタッフ一同、たゆまぬ努力をして参る所存です。

今後ともサザンオールスターズを何卒よろしくお願い申し上げます。

株式会社アミューズ

桑田佳祐(サザンオールスターズ)

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